最近、新しい研究に着手している。まわりの人とのネットワークの有無が、健康維持活動や人生満足度とどのように関わるか、というものである。

医学だけでなく社会学的な視点も含んだ興味深いテーマで、横浜市と栃木県小山市の協力のもと、6000人の方にアンケート調査を行った。

入力したデータをもとに解析をはじめ、関連した文献を読み始めた日。午後1時ごろから机の前に座り、はっと気づいたら11時。あら、夕食の時間を過ぎていたなあ、と驚き、しかし何とも幸せな気分になった。

食事を忘れて夢中になるひとときがあるなんて、なんと幸せだろう。それほど集中できることが、この年になってもまだある喜びを感じたのだ。

子供のころ、夕食を忘れて遊んでいて、親に怒られた記憶のある方は多いと思う。そのくらい夢中になることは、年と共に少なくなり、すべてが当たり前になっていく。

ところで、夢中になることでも、それが他者から与えられたものか、自分で作り出すものかによって、満足感は違ってくるだろう。映画やコンサートやタレントの追っかけで夢中になる場合と、自ら何かを作り出したり、学んだりする場合とでは、持続する満足感に差が出るように思う。

外存型の夢中は、そのひとときが終わった後の満足持続時間が短く、また次の刺激がないと手持ちぶさただ。しかし、内在型の夢中は、そのひとときの後、しばらく幸せな気分が続く。

自己満足でしょ、食事や睡眠が足りなくなるのはお肌に悪いわね、などと皮肉られる。食事も、映画も音楽も、もちろん好きだ。しかし、それだけでは物足りない何かは、自ら作り上げる夢中のなかにこそ存在する。そして、そんな夢中を人生に持つと、人と比較して落ち込んだりしなくなる。