あなたにとって最もよい医療機関情報源は何でしょう?こんな質問に、あなたはどう答えますか。
医師、テレビ、新聞、インターネットなど情報源はさまざま。先日、こうした調査を行ったところ、6割の方は医師と答えているが、3割の方はインターネットを第1位にあげている。しかも若い世代では、インターネットの方が医師よりいい情報源ととらえていることがわかり、かなり驚いた。
新型インフルエンザの流行の時、あなたがどの情報を信頼したか、振り返ってみてほしい。もしかすると、医師の情報よりインターネット情報を信用した方も多いのでは。それだけ医師がなじみのない存在になっているのかもしれないという危惧を感じる。
ところで、かつてアメリカで炭疽菌テロが起こった時のこと。「あなたは誰の誰の情報を信じますか」という調査をハーバード大学HSPH(公衆衛生大学院)が行ったところ、上位にはずらりと医師が並んだのだという。その理由として、政治的配慮をする政治家や、利益を追求する企業とは違う医療の中立性があげられていた。
テロではなく普段の生活においても、若い世代の医師への信頼度は、わが国とは逆に高いというデータがある。背景には、利潤追求ではない学問としての医療を追求し、中立性を重んじる医師たちの存在があるのだろう。
さて、前述の医療情報源の調査を学会で発表した。久しぶりに日本の学会に出席したら、製薬会社のスポンサーがたくさんついているのにびっくり。スポンサーがいないと会の運営ができないのだろうが、中立性は失われる。
国からの補助金不足から、こうした状況に陥るのだろうが、医療への信頼低下は現場のコミュニケーション不足につながる。地味な研究が実は医療の中立性を守り、医療現場のコミュニケーションをスムーズにすることを忘れないでほしいと思う。