アメリカ発のカウンセリングに、「頭上のオレンジ」というものがある。
頭の上にオレンジをのせる。といっても、実際にオレンジをのせて歩くのではない。イメージするのである。頭の上にオレンジがひとつのっていると想像し、そのオレンジから周囲をみる、と仮定するのだ。オレンジの目線、というわけだ。ちょっと試してみてください。何となく視野が広がり、周囲がより広くみえる感じがしませんか?

 思考が行きづまった時、アイデアに困った時、イライラした時、オレンジの目線でまわりをみるようにすると、視野が広がり、考え方を変えるきっかけになるというものだ。

 この方法の話をしていたら、剣道好きの男性が「宮本武蔵が同じようなことをしていた」とおっしゃる。詳細はわからないが、観はただ見ることに勝り、より広くみることが大切だといったことを述べているのだという。

 たしかに心を静めると、自分の背後や横など実際に目ではみえない部分の気配や空気を感じることができる。人間は目だけでなく、肌をはじめ全身でみることができるのだろう。アメリカのカウンセリングと日本の宮本武蔵に共通項があるのはおもしろい。オレンジのイメージは剣術のためのものではないが、心を静め、狭くなった考え方を修正していく時に役に立つ。

 ところで、アメリカの医学というと、完全に西洋医学と薬主体の治療と思いがちだが、逆に代替医学の研究も盛んで、裏づけのある技術も数多い。

 医学部の中にも、アリゾナ大学のように代替医療の実践と研究が有名なところもある。代替医療のうち、オステオパシーという手段を用いる治療法は日本の整体ともいくつかの共通項がある。メディケーション(瞑想)といえば西洋風だが、座禅でいう無心とも共通項がある。心を静めたい、元気に生きたい、という思いは人間みなに共通しているのだろう。