のど元過ぎれば、という言葉がある。痛い思いをしたからこりたかと思いきや、また同じことをする。こういうタイプはダメな人とレッテルをはられることが多いが、あなたはいかが?
そうした分類をされると、私自身はダメな人のジャンルに入る。ボストンにいて、ものすごく硬いパンをかじり、セラミックの歯がかけたのが3回。コンピューターのパスワードを書きとめておくのを忘れ、四苦八苦したのが2回。その他もろもろのトラブルは、いずれも失敗してから、ああまたやっちゃった、と気づく。
痛い思いをしたのをすぐ忘れて不注意な人間だなぁ、とあきれるのだが、最近おもしろいことに気づいた。なぜすぐそうなるか、という点だ。
つまり、イヤなことをケロリと忘れ、次のステップに進んでしまうからなのだ。そして、失敗しない人というのは、多分過去の痛い思いをいつまでも忘れずにいる人なんじゃないか、と思ったりした。いつまでものど元をすぎないから、注意深く失敗しない。
どちらがいいのかはわからないし、いい悪いという問題ではないかもしれないが、その人の傾向ととらえてはどうだろう。
私は子供のころ、母親にしじゅう「また同じことをして」と怒られた。母親は失敗をいつまでも覚えていて、注意深い傾向の人だったから、私の不注意を学習不足だと思ったのだろう。
先のことを考えて過去を忘れてしまう人と、過去をしっかり覚えて注意する人。人はさまざまだ。過去をしっかり覚えてつらい感情だけを抜きとり、学習したことだけを記憶に残すようにしたら失敗を未来に生かすことができる。これは難しいけれど、すぐつらさを忘れて先に進むタイプの人は「私ってダメな人」と決めつけず、「つらい思いをすぐ忘れられる」特質をもっているととらえつつ、少しは過去をふり返るのもいかが。