ハーバード大学とダナハーバー研究所の危機管理に関しては、いわゆる院内感染対策のほかに治安対策も含まれている。
日本では昨年、院内で発砲事件があり、入院患者が死亡するという悲劇があった。ダナハーバー研究所の病院内には危機管理室があり、院内で不審者を見かけたとき、職員はすみやかに院内に設置された電話で通報するように義務づけられている。また、院内の火災予防も徹底しており、新規職員のオリエンテーションでは、消化器の実地デモンストレーションまで行われた。
私はこれまで大学病院をはじめいろいろな病院で働いてきたが、新規採用のオリエンテーションで火災予防訓練までされたことはない。
また、医学研究室で働く職員はこうしたオリエンテーションとは別に、化学物質をあつかう場合の注意と放射性物質の管理ビデオをしっかり見ることになっている。
こうした内容のほか、給与明細、休暇制度、健康保険などこと細やかな説明も行われるし、ちょっと驚いたのは、職員に「マニキュアの注意」までしていたことである。爪はみじかくカットし、マニキュアは禁止。バイオジェルやスカルプチュアという爪の上に爪を補強する物質をのせるおしゃれもやめてください、などと本当に細かい。
こうした危機管理をすごいなあと思いつつ、病院の敷地内にあるカフェで一息入れようと思って座っていたら、なんと手術の白衣を着たまま外出している医師や看護師がたくさんいる。あれだけ徹底的に説明されているのに白衣のまま外出はまずい。
ところが、さらに驚いたことには、その姿のまま地下鉄に乗って帰る医療従業者までいるのである。おまけにカフェでみかけた看護師は爪の先端が赤く光っていた。どこの場所でも危機管理は本当に大変なんだ、と痛感しながら過ごしている。
2008.10.12.sun