レストラン勤めのAさんは、半年前に比べてめっきりお客が減って大変だと嘆いている。「街を歩いていても、みんながすさんでいる感じ」という。

 さて、不況といえば、その大きな要因となったアメリカ経済がすさまじい状況なのはいうまでもない。アメリカ嫌いの友人から「そんな不況の中にいるのはさぞ大変でしょう」と皮肉まじりに言われた。たしかに昨年の夏からみると、ホームレスの人たちがじわりと増えたように思われる。

 にもかかわらず、歩いていてもさほどすさんだ感じはしない。日本よりもひどい状況だと思うのに、なぜだろうと考えていた時、テレビの世論調査を見た。経済状況が今以上に悪化すると考える人は2割にとどまり、8割はこんな感じだろう、あるいは、よくなるのではと予想しているという。

 これでわかった。要は、楽観主義と言うのか、何しかなるだろう、と思っている人が多いのだ。すさんだ感じが少ないのはこの思考性のためなのだろう。現実がどれほど大変な状況でも、未来に希望がある人ほど精神的に落ちこみにくいといわれている。つまり、現実が厳しくても将来を明るくとらえられるかどうかがカギだ。未来の展望がある国民ほど自殺率も低い。

 日本はどうだろう。先行きの見通しを明るくとらえられるような人はごくわずかではないだろうか。その要因のひとつは思考回路。「どうせうまくいかないに違いない」と考えるくせがついていることだ。それには私たちが育ってきた環境の影響も大きい。何とかなるさ、というより、最悪の事態を考えるくせがついているのだろう。

 第2の要因はやはり政治の影響だ。アメリカではオバマ人気が圧倒的で、今は大変でも未来はよくなると、何か思わせてくれる雰囲気がある。誰がやっても、どうせ何も変わらないと思わせるような政治では、国民の思考回路は今のままだ。

2009.1.18.sun