買い物をする時、「この商品は人気です。売れてます。」と言われることがある。生活必需品の場合はきっと便利なんだろうと思って購入の参考にするが、衣服の場合は逆にその商品を買わない。同じジャケットを着ている人にばったり会うなんでイヤですからね。

 しかし、このせりふでわかるように、日本では「みなと同じ」が一種の安全弁に思われる傾向が強く、とりあえずみなから「浮かない」ようにすることが日常生活の基盤になっている。こうした傾向はこれまでも触れた。

 しかし、調和がとれている時には、これでさほど問題にならないが、ひとたび調和がとれなくなった時、困ったことになる。最近の円高不況でそのことを実感した。

 経済危機がとりざたされた途端、ほぼすべてのマスコミが先行きの悪い見通しばかりに焦点を当て、連日紙面のほとんどがこのニュースで占められるようになった。大手企業が業績を下方修正して人員削減を発表するや、他の企業も追随した。全く同じ方向性で企業トップが方針を決めたわけである。

 「みんなと同じようにしていないと不安で、それしか道がない」と考えている経営トップばかりなんだろうなあ、とがっかりした。その影響で、みなが職を失う不安で買い物をひかえ、日本中が元気を失っている。

 よくないことばかりに注目すると体調や心の調子が悪くなる。同じ視点しか持たない家族構成だと調子を崩しやすいが、家族に一人異なったものの味方をする人がいると打開できることがある。今の日本の暗さは、同じような出身、思考性の政治経済のトップで占められた弊害ともいえる。

 今、アメリカはオバマのもと新しい雇用と職を作ろうと模索中だ。何でもアメリカがいいとは言っていない。しかし、多様性を大切にして新しい視点をとり入れる方向がないと、危機は乗り切れないだろう。