生活の場で、「しなければいけないこと」と「したいからすること」の割合がどうなっているか、チェックをしてみてください。私は、これを「ネコの視点チェック」と名付け、後者、つまりネコの視点の割合が高いほど、心の満足度も高いと考えている。

 ネコは「しなければいけない」と考えて行動したり、計算したりしない。したいことをしたいようにしている。この人と会うのが得だから、と計算したり、この人は役に立ちそうだからとつきあったりはしない。好きな人には寄っていくが、気に入らない人には近寄らない。

 人間の場合、悲しいかな、したいことだけをして、会いたい人とだけ会っていたら生活が成り立たなくなる。だから、「しなくちゃいけない」仕事をし、嫌いでも役に立ちそうな人とかかわる。しかし、生活のすべてが「しなくちゃいけないこと」で占められていたら、体調を崩すのは明らかだ。だからせめて、生活の半分位は「したいからする」であるといいだろう。

 年をとるよさは、若いころは「しなくちゃいけないから」していたことを少しずつ好きになり、やがて、それに楽しみを見つけられるようになることかもしれない。年をとるごとに、生活の中の「ネコの視点」の比率は高まっていくかもしれないのである。

 私は、若いころ、研究のために文献を調べたり読んだりするのが、義務だとしか感じられなかった。しなくちゃいけないからしていたのだが、今は研究が大好きになり、「したいからする」ことに変わった。点検してみると、ネコの視点比率がとても高くなっているのだ。これは幸せなことである。

 ただし、この視点はいわゆる勝算を度外視しているから、収入、名誉などの結果はついてこない。結果をとるか、心の満足をとるか。さて、あなたのネコの視点比率はいかがですか。