ある朝、新聞広告を見て「あれれ」と驚いた。新刊の宣伝が載っている。本のタイトルはたしか、「女の子を幸せにする育て方」「男の子のやる気をひきだす育て方」。思わず心の中でうなってしまった。みなさんはいかがでしょう。このタイトルを見て「あれッ」と感じた方は、どのくらいいらっしゃるのかしら。

 特に違和感もなくすんなりと受け入れられる方が多いとすると、これはおそろしい気もする。などと核と、「うるさい人だ。何が問題なのか」と怒られるかもしれない。

 「子供を幸せにしてやる気をひき出す育て方」では、なぜ売れないのか。女の子には、まわりの人とうまくやって幸せにいきてほしい、男の子には勉強して仕事のできる人に育ってほしい、という親や社会の期待が大きいからだろう。もし、「男の子を幸せにする育て方」「女の子のやる気を引き出す育て方」などという題をつけたら、売り上げ低下は間違いないかも。

 さて、「ピグマリオン効果」という言葉をご存じだろうか。ギリシャ神話のピグマリオンにちなんでつけられたこの心理学用語は、強い期待をこめて相手に対すると、それが相手に影響を与えるというもの。ミュージカルの「マイ・フェア・レディ」はこのギリシャ神話をベースに作られた。

 子供は、親や教師の期待を敏感に察知する。期待に応えようとして、その方向に伸びるともいわれる。親が男の子には高学歴を期待し、女の子に「ほどほどでいいんじゃない」と思うと、それが子供に影響する。

 理系の専門分野や大学の教授職も日本は女性が少ないなあ、と実感している。本人の思いと親の期待が一致すれば問題ないが、本当は学問向きの女の子に「ほどほど」の教育をされたら、日本の科学技術の損失につながっていく。「当たり前」で通ってきたことに、矛盾が潜んでいる。