2年前、ニューヨークのそのホテルには、4人のベルボーイがいた。去年、ベルボーイは2人になり、この春、ボストンからの帰りに再び泊まると、ベルボーイはたった1人。部屋の冷蔵庫もルームサービスもなくなった。1階のレストランは朝食のみで、昼・夜は閉鎖。すさまじいまでの経費削減だった。おかけで、「日本なら、どんなビジネスホテルでも冷蔵庫がないところはないなあ」と、改めて日本のホテルのサービスとホスピタリティーに感謝した。ところが、である。
先日、四国で仕事があり、某ホテルに一泊した。航空会社が手放し、鉄道会社に経営が移行したそのホテル、建物は立派である。しかし、到着した時から「変だな」と思うことが頻発した。きわめつけは翌日の出発間際だ。
コーヒーを飲もうとラウンジに入った。ところが、隣で男性客がたばこをたてつづけに吸い始めた。私はクーラーのせいでのどの具合が悪かったため、席を代わろうとウエートレスを探した。しばらく待つが、誰もいない。仕方なく、自分で水やコーヒーを持って席を移った。新しい席と2往復する間誰もこない。人手不足なのだ。
やれやれこれでゆっくりコーヒーを飲めると思ったら、ツカツカとウエートレスが現れて、「お客さん、あっちの席から移りましたね。勝手に席を移られちゃ困るんです」
びっくりした。「あなたたちを探したけどいなかったのよ」と説明したが居心地が悪く、コーヒーは半分しか飲まずに出た。人手が足りないから、建物はきれいなのに相手の気持ちを察するゆとりが失われているのだ。
このホテル、マネージャーも皆若かった。かつて、ホテルはもてなしのお手本だった。だが今、誇り高い時代のホテルマンは、リストラされてしまった。採算優先、利益第一に走ると失うものも大きいのではないか、と心配である。
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