本離れが進行しているという。書店に行く機会が減り、本はインターネットで購入するという人も増えた。インターネット大国のアメリカだが、ことボストンに限っては、本屋は結構繁盛している。Tと呼ばれる市内を走る電車内でも本を読んでいる人をよく見かけるが、いわゆるマンガ本を広げている人は見かけたことがない。
私の場合、日本では確かに本屋に行く機会が減っている。中規模の書店は、大抵どこに行っても品揃えが決まっていて、いわゆるベストセラーものと新刊本が置かれ、さらに新書と文庫が整然と並ぶという「予想のつく」顔ぶれだからかもしれない。ふらりと書店に入り、「あれ、こんな本があるのか」と手にとる面白さが、このところの東京では、なかなか味わえなくなった。
どうしても読む、と決めた本はインターネットで買った方が確実に手に入る。だが、予想外の本に出合う楽しさは、実際に本を手に取り、パラパラとページをめくって見ることにある。だから、書店に出向かなければ味わえない。
ボストン市内には、数件の書店があるが、みなそれぞれ、品揃えが全く違う。一軒で山積みにされている本が別の店でもあるかというと、全く置かれていなかったり。本屋の個性が強烈だ。市内には、ハーバード大やボストン大があり、ハーバード大生協の大きな書店には、ここでしか入手できない本が多い。自分の専門分野ではない、他分野の本を見つける楽しみも味わえる。
ボストン大近くの書店は、同大関係の研究者の著作が多い。9月が近くなると、「さあ、勉強のスタートで読んでおこう本」コーナーができるが、これも店によって多種多様。書店内のカフェでじっくり本を読む人も多く、書店を「一人時間」の充実に使っているとわかる。活字離れを防ぐには書店の個性化が必要では、と思ったりする。