先日ハワイでラジオ番組に出演し、現地の方のこころの悩みの相談を受けた。そのお一人は、6年前に夫を亡くして以来うつ病で、投薬治療を受けているが、ちっとも良くならず、つらいという。
食材を買ってきて食事を作ることはできるが、それ以外で外に出たくはない。まわりが明るく、観光客も多いから、幸せそうな人々を見るといたたまれなくなるらしい。ご家族は近くにいらっしゃらないのかと聞くと、子供たちは近所に住んでいる。でも、「子供たちは独立して結婚もしているから、迷惑をかけたくない」と続けた。
この日系女性は、まわりのコミュニティーともあまり接触がない様子だ。独立心も、子供に迷惑をかけたくない、との気持ちも立派。しかし、週に一度、みなで食事をするのは迷惑だろうか。
「全てか無か」でものごとを判断すると、気持ちが落ち込む引き金となる。毎日一緒の食事は、相手に負担かもしれない。しかし、ほどほどの距離感を保ちつつ、子供たちや友人、知人とコミュニティーをつくり、ネットワークを広げれば、落ち込んだ気分もサポートしてもらえる。
加齢と共にネットワークは次第に小さくなり、人とのかかわりが減ると気持ちが落ち込む、とハーバード大学のN・A・クリスキタス教授が語っている。ネットワークが縮む時期に配偶者の死が重なり、うつが進んでしまう例もある。話し合える人が多いと落ち込む可能性は低い。とくに友人は、特段何かをしてくれなくても、存在自体に意味がある。
いろんな人に少しずつサポートしてもらい、元気を回復したら今度は誰かを手助けする、というネットワーク作りが必要だろう。