”映画.com”より引用
エバーアフター
監督:アンディ・テナント
音楽:ジョージ・フェントン
主演:ドリュー・バリモア
1998年 アメリカ合衆国作品
グリム童話のシンデレラを基にしたこの映画を見たのは20年前。当時はシンデレラが意地悪な継母に何を言われてもじっと耐えてがまんするか弱い女性で、王子様にみそめられ、幸せになるという従来の解釈ではなく、自立し運命を切り開き、理不尽な継母には反抗し、王子に助けられるのではなくモラトリアムな王子にカツをいれて自力で幸せを手に入れるということに痛快感を感じたのでした。
男は外で働き、強くたくましく、女はしとやかでかわいく素直で我慢強く人の言うことを聞き自分の意見を言わないのが良いとされていた(いや、今でもまだそうした傾向は強い日本ですが)なんとも窮屈で私には生きにくかった時代に一石を投じてくれた映画で、映画を見ながら痛快で「そう、そう、女は度胸、男は愛嬌」などとひとり呟いたものでした。
さて今回映画リレーで久しぶりにまたエバーアフターを見たのですが、今回は「まっとうに生きる人、自分だけでなく弱い人も幸せにしようと闘う人が幸せになり、性悪でひとを蹴落とす人が罰せられる。権力を持つ人はその権力を人々が幸せになるために使う」というストーリーのもつ安心感で、幸せな気分に浸れたのでした。こういう書き方をすると何とも陳腐に響くのですが、こういうテーマでほっとして幸せな気分になるのは、今の世の中がそうした当たり前にあっていい安心感が全くないということの表れなのでしょう。
お話はある貴婦人の屋敷にグリム兄弟が招かれたところからはじまります。貴婦人のお屋敷の居間にはレオナルド・ダビンチが描いた美しい女性の肖像画があり貴婦人はグリム兄弟の書いたシンデレラのお話の主人公はフィクションではなく実在の人物だと告げます。そしてその肖像画の女性がそのひとだと伝え彼女、ダニエルのお話を始めるのです。
ダニエルが父を亡くし継母にこき使われるのは童話の通りです。しかしダニエルは童話のイメージとはかなり異なります。ユートピアを読み剣の達人でもあるのです。王位を継ぐのが嫌で城を抜け出してきた王子が山で襲われると王子を助け、召使が売り飛ばされると召使を助けるため単身城に乗り込み王子に国をつかさどるものの責任を語ったりします。王子はそんなダニエルの生きる情熱にひかれていくのです。
ダニエルは王子に農民が国の原動力になっている事や王だけでなくどんな人も持って生まれた場から逃れられはしないが、その中で精いっぱい生きている事などを語ります。といっても彼女は決して説教がましい性格ではなく自分が感じたことをそのまま語っているところが魅力的なのです。彼らのよきサポーターとしてレオナルド・ダビンチが登場しアドバイスする言葉が光ってます。
主演のドリュー・バリモアは、正当派美人ではないでしょう。しかし木に登り、盗賊と闘い、売り飛ばされた自らの危機を剣を使って脱出する自立した女性を非常に魅力的に演じています。この映画、地位のある人が賭け麻雀をして辞職したなどという報道がある週末に見ると結構すっきりします。映画の中に出てくる「何不自由ないのに幸せでない人」というせりふが頭に浮かびました。