今年も残り少なくなってきた。毎年、春から夏まではゆっくりと時がすぎるのに、夏を過ぎると月日が次第に早足になり、秋の記憶がないまま冬に突入して、あっという間に暮れがやってくるような印象がある。みなさんはいかがでしょうか。

ジャズのスタンダードナンバーに「セプテンバー・ソング」という曲があり、たしかそんな内容の歌詞だったと思う。この現象、何かに近いなあと考えてみたら、人生とよう似ていることに気付いた。子供のころは、早く大人になりたいと思うのになかなか時が経たず、30歳を過ぎると人生は早足になり、40歳のころの記憶はさだかではなく、気がつくとすでに老年にさしかる、という感じだろうか。

楽しいことが多いと時はあっという間に過ぎるもの。では、子供のころが楽しくなくて、壮年期が楽しいかというと、そうとばかりは言えない。別の見方によれば、初体験のイベントが多いと、時がゆっくり過ぎるような印象を持つのだそうである。30歳を過ぎると、初めてのことが少なくなる。いわゆる「慣れ」の感覚のおかげで、時がさっと過ぎる感じになるらしい。

仕事でも私生活でも、すべての分野で年をとると、「はじめて味わうドキドキ感」がなくなってくるものだ。年齢による落ち着きは、こんなところから生じるのかもしれないが、ちょっとさみしい気もする。

一年に一つずつ「新しくはじめる何か」を加えれば、年月をゆっくり味わう楽しみになるのでは、と思ったりもする。私自身は今年、文科省の科学研究費を獲得したので、ガンの知識や予防行動と経済格差、精神的満足度格差の関わりについての研究や、ツイッターなど新しい通信手段が心に与える影響に関する影響をスタートした。

ゆっくりじっくり、ドキドキ感を味わいながら過ごしたいものである。