海原純子の医学講座
美容貯金

 海外旅行に出かけた編集者のC嬢(26歳)が帰国。
「せっかくの休暇だったのにさんざんです」
 なんと旅先のバブルバスの中で転び、肋骨にひびが入ってしまったのだそうです。水着映え(?)するようにがんばってダイエットしたのに、と悔しがることしきり。

 C嬢の話をきいていて、ふと心配になりました。このところ、ちょっとしたことで骨折したり、骨にひびが入ったりする女性の話をよくきくのです。

 あなたの骨は大丈夫でしょうか? 先日新聞に女子スポーツ選手(特に長距離ランナー)の骨量は70歳なみ、という記事がありました。
 ダイエットと激しい運動による体脂肪の減少で骨の量が減り、骨からカルシウムが流れ出しているのです。運動中の骨折が心配です。エアロビクスとダイエットに明け暮れるあなたは大丈夫かしら。ここでカルシウム・チェックをしてみましょう。

チェックリスト(4)
自分でできるカルシウム・チェック

当てはまるものにチェックを付けてください。
1
イライラしやすい
2
寝つきがわるい
3
集中力が低下して物おぼえが悪くなった
4
胃の調子がよくない
5
ダイエツトを厳しく実行している
6
体脂肪が10パーセント以下
7
標準体重より15パーセント以上やせている
8
エアロビクスなどの激しい運動を連日行っている
9
朝食を食べない
10 ミルク、ヨーグルトがきらい
11 魚は刺身、ムニエルなどの料理法で骨のある魚を食べない、青魚がきらい
12 外食がほとんどで、ファーストフードが多い
13 酒、タバコをたしなむ
14 生理が不規則である
15 アトピー性皮膚炎で、ステロイド剤の内服薬を飲んでいる
16 ミルクを飲むとすぐおなかがゴロゴロする
17 野菜、果物をあまり食べない
18 日焼けがイヤで外を歩くことがきらい
19 まったく運動をしない

※チェックリストの結果についてはこちらをご覧ください。

 カルシウム不足は骨を弱くし、いわゆる骨粗髭症の引き金になるだけではありません。カルシウムは精神をリラックスさせる作用があるので、不足するとイライラしたり、集中力が低下したりします。じっと座って何かに集中する、ということがつらくなり、ボーイフレンドと映画を観に行っても何となく落ち着かない、コンサートなどでじっと座っているのが苦痛、などの症状を引き起こします。イライラが続いて不眠になることもあるのです。

 骨がもろくなるなんて自分には関係ないわ、なんて思わないでください。アメリカでは、骨がもろくなることは老化の第一歩、カルシウム不足は老化の目安、といわれているのです。というのも、骨がもろくなると活動範囲が狭くなり、肉体的、精神的老化を押し進めるからです。

「若さを保ちたい」と思うなら、カルシウムをしっかりとることがとても大切なのです。前出のカルシウム・チェックで4個以上あてはまった方はカルシウム不足予備軍といえますので、今の食生活に次のメニューの一品を加えてはいかがでしょう。


処方箋(6) カルシウム補給メニュー


●朝●
・カフェラッテ
 コーヒー100ミリリットルに泡立てたミルク150ミリリットルを加える。
・フルーツヨーグルト
 プレーンヨーグルト200ミリリットルにいちご数個
 またはグレープフルーツ4分の1個を加える。
・チーズピタパン
 ピタパンにカッテージチーズ大さじ3杯、トマトを入れ
 バジルまたはクレージーソルトで昧をととのえる。

●夜●
・ほうれんそうのごまあえ、または小松莱のおひたし
・ひじきの煮つけ
・ほうれんそうのサラダ
・冷や奴
・あじの素焼き
・フロマージュブランのサラダ
 フロマージュブラン200ミリリットルに好きなフルーツとオリゴ糖小さじ2杯、
 もしくはあさつきのみじん切りとしょうゆを加える。

 以上のメニューは、おのおの1品につきカルシウムを約200ミリグラム含んでいると考えてください。1日に必要なカルシウムは600ミリグラムです。ミルク、ヨーグルトは200ミリリットルで約200ミリグラムのカルシウムが含まれています。また、しらす干し30グラム、木綿どうふ3分の2丁、がんもどき1枚、小松莱100グラム、ごま大さじ2杯、干しひじき15グラムにそれぞれ200ミリグラムのカルシウム含まれていますので、これを頭に入れておいてください。

宇宙飛行でわかったカルシウムの代謝

 骨がもろくなる現象が注目されたのは、アメリカのアポロ宇宙船や旧ソ連の宇宙飛行士を飛行後に測定したところ、著しく骨量が減っており、歩行困難になるほどであったことがきっかけかもしれません。無重力という空間で骨に刺激が与えられないと、たった数日で骨はもろくなるのです。運動をまったくしない人では骨に負荷が加わらなくなるので、宇宙飛行士と同様に骨がもろくなります。そこで、骨を丈夫にするための運動メニューを紹介しましょう。


処方箋(7) 骨を丈夫に若々しくする運動メニュー


(1) ウオーミングアップ・ストレッチ3分間
(2) 第1日日〜第7日目は早足で15分間歩く
(3) 第8日目〜第10日日は早足で20分間歩く
(4) 第11日日〜第14日目は早足で30分間歩く
(5) クーリングダワン数分間

 15日日以後は早足30分を週3回以上続けて行うと、肥満防止にも役立つことはいうまでもないでしょう。階段の昇り降りも、骨を丈夫にする運動のひとつです。

女性ホルモンと骨の関係

 運動は骨を丈夫にしますが、あまり激しい運動をしすぎて体脂肪率が減少し、生理が不規則になると、今度は逆に骨量が減って骨がもろくなります。ダイエット中の骨折、スポーツ選手の骨量減少は、体脂肪の減少による卵巣機能低下、卵巣ホルモン低下が原因です。つまり、若くても閉経後と同じ状態になってしまうのです。では、どうして女性ホルモンが骨に影響するかについてお話ししましょう。

 卵巣ホルモンのひとつである卵胞ホルモン(エストロジェン)は、骨からカルシウムが流れ出すのを防ぎ、腸でカルシウムが吸収されるのを促進します。また腎臓でビタミンDが活性化するのを助ける働きをするのです。ですから生理が不規則になってエストロジエンが低下した時や、閉経後には骨がもろくなるというわけです。

 運動をする方は、あまり体脂肪を落としすぎないこと、を念頭においてください。また生理が不規則になったり、無月経になったときは3カ月以上放置しないことです。骨がもろくなる原因となるので、必ず治療を受けてください。

 さて、カルシウムの他に骨に影響を与える栄養素にビタミンDとビタミンCがあります。いずれもカルシウムの吸収に役立ちます。さんま、いわし、さばなどの青魚やきのこ類にビタミンDは多く含まれています。1日に10分間程度日光に当たることも、皮膚でビタミンDを合成するのに大切です。

 外食の多い方は、加工食品に含まれるリンがカルシウムの吸収を低下させるといわれているので注意してください。お酒は、1日ビール大びん1本弱飲む人では骨量が減ることが報告されています。タバコのニコチンも腸からのカルシウム吸収を妨げ、卵巣に作用して閉経を早めることがわかっています。酒、タバコをたしなむ人はカルシウム補給メニューをしっかりとってください。コーヒーの飲みすぎも危険因子といわれています。

 カルシウムをしっかりとって骨の健康を保つことは、体脂肪をバランスよく保つこと、女性ホルモンのバランスを保つことと同じといえます。つまりは老化を防ぎ、若々しさをキープするポイントといえるのです。食事メニュー、運動メニューのことをちょっと頭に入れて、今日から外食を減らしてカルシウムバランスをキープしてください。


チェックリストの結果
0〜3項目 まず問題なし。
4〜8項目 生活改善の必要あり。
9項目以上 カルシウム不足の可能性あり、要注意です。