ある調査によると、人が亡くなる時間にはリズムがあり、午前4時すぎごろに集中するというのです。
病気も同じような傾向があります。たとえば心筋梗塞。心筋梗塞をおこしやすい時間も人間のもつリズムと関係があり、早朝と夜の9時から11時ごろに集中するといわれています。
なじみのあるところでは、歯の痛み。昼間は何ともなかった痛みが夜になってから急にひどくなった経験はありませんか。
実は歯痛は午前0時から午前4時ごろまでが最もひどくなるといわれています。これも人間のもつリズムとかかわりがあるのです。
人間のリズムから考えていくと、深夜に診療する歯医者さんが必要というわけ。昼間予約で治療するだけでは、事は足りないのです。
私も当直をしているとき、昼間ケロリとしていた人が夜になると急に痛みを訴えたり、同時に救急車が集中したりで右往左往した経験があります。
人間にはリズムがあること、そのリズムによって支配されていること、リズムを乱そうとするとその逆襲にあうことをおぼえておいてください。
海外旅行でリズムをくずさない方法
人間のもつリズム、これは内因性リズムといわれています。
人間は暗い部屋に閉じこめられても、昼と夜のくりかえしを察知することができ、それは1日25時間の周期をもっています。外の状態がよくわからなくても胃腸のリズムが朝を察し、昼を感知し、夜がやってくると休むというわけです。
この25時間のリズムを地球の自転にあわせ、24時間に調整しながら、人は生活します。
このリズムをサーカディアンリズムと呼んでいるのですが、このリズムが著しく乱れる代表は、海外旅行中の時差ボケでしょう。2〜3時間の時差は支障をきたしません。しかしそれ以上になると、内因性リズムは乱されます。このために肌あれ、胃腸障害、不眠、その他もろもろの体調不良がおこつてきます。
楽しいはずの海外旅行なのですから、内因性リズムを乱して体調をくずし、美しさを損なうのは避けたいですね。
そのためには、リズムを少しずつあなたの旅行の時間にあわせていくことです。日本から旅行する場合、東方(ハワイやアメリカなど)に出かけるときはかなりリズムの乱れが激しく、西方(ヨーロッパ方面や東南アジア)へ出かけるときはやや楽で調整しやすいのです。
しかし、いずれも旅行先の時間に自分の内因性リズムが適応するのには、1週間程度時間がかかります。
ほんの数日のハードスケジュールで旅行すると、旅先時間に適応する前に帰国して再びリズムが乱れ、3週間ほど調子が悪くなる人もいます。
旅先でも帰国してからも美しくいたい、という人は、旅行の前3日間ほどを利用して、現地のリズムを自分の中にとり入れていきましょう。時間を少しずつ旅先の時間にあわせ、食事と休む時間、起床時間に注意を払ってください。
特に朝に注目。早起きがよいときは、なるべくそのように工夫してください。夕食を早くするのも効果的。ただし、あまり強烈に時間調整をしていると、日本で生活するリズムが乱れますので、2〜3時間の調整にとどめましょう。
機内では、次々と出される日本時間にあわせた食事には手を出さぬこと。せめて機内だけでも、到着地にあわせた時間帯で食事をすることが、リズムを乱さないポイントです。
むろん帰国のときも同様です。日本時間にあわせて食事の時間を決めてしまうことです。クルーに煙たがられるかもしれませんが、機内手荷物にフルーツとミルクまたはヨーグルトなどの軽食をもって乗りこみ、自分のリズムにあわせて食事をしてみては。少々勇気は必要ですが・・・。
不規則な生活でもリズムを保つには
数年前からアメリカでは、メラトニンという物質が注目をあびていました。人間の不調や老化は、内因性リズムの乱れである、という観点から開発された物質です。これは松果体ホルモンの一種。副作用はまだ不明です。しかし、アメリカでは処方箋なしでドラッグストアやスーパーマーケットでも売られており、超人気商品になっています。
服用するとぐっすり眠れるという人もいて、かなり気軽に用いるケースが増加。これからの研究課題物質です。しかし、それにしてもすべての老化の原因はリズムの乱れ、といい切っている大胆さ。私たちは生活リズムをもっと大事にしなければいけないということを、もう一度再確認すべきといえるでしょう。
マスコミ関係、美容・ファッション関係の人たちなどは、日によって通常出勤のときと、昼ごろに出勤のときとがあり、それにあわせて、前日遅くまで起きているというリズムになりがちです。
これが、リズムを乱す原因になります。たとえ朝遅い出勤でも、通常と同様に起きて朝食をとる、これがリズムを保つポイントです。
休日の前も同様です。深夜まで遊んだり、安心して(?)仕事をして休日お昼すぎまで寝ていたりすると顔がむくみ、その翌日まで調子が悪くなります。いつも通り、あるいは1〜2時間だけいつもより多く寝て、それでも午前中には起きること。シャワーをあびて朝食をとったあと、少し動いて、もしもそれでも眠い場合は午後から軽い昼寝を 1時間ほどとるようにするのが、リズムを保持することにつながります。たとえ昼寝をしても、夕方、体を動かしたりウォーキングを30〜40分することで、夜の寝つきの悪さを心配する必要はなくなります。疲れをとり、むくまずに肌の調子を整えるにはこの方法をおすすめします。
女性だけの時間を上手に過ごす
さて、女性は日々のリズムの他に、生理にあわせた周期があります。生理後1週間から10日で排卵がおこりますが、このあと次の生理までは、黄体ホルモンが活発に分泌され、吹き出物ができやすくなったり、まぶたが腫れたり顔がむくみがちになったりします。
この時期は旅行するのにも時差に適応できにくくなりますので、旅行日程をたてるときは、はずしておいたほうが無難といえます。
旅行中に生理にあたらないようにと生理をずらす薬(卵胞ホルモンと黄体ホルモンの混合剤)を服用しながら旅行に出かける人もいます。ただし、この薬を服用していると、「生理にならない」という状態をつくり出すだけで、体は、生理直前と同様の状況になります。
ですから、イライラしたり、肌にブツブツができたり、むくみがちになったり、胃腸がすっきりしなかったりするわけです。
薬を服用しながらの旅行がおすすめできないのは、こうした理由からです。新婚旅行や、彼との大切な旅行は、自分のリズムにあわせてスケジュールをたてるのがいちばんです。
さて、どうしてもスケジュール調整がうまくいかず、生理の前に旅行に出かける羽目に陥ったときには、少なくとも、むくみ防止に次の方法をとってください。生理前は、ビタミンB6とマグネシウムが不足しがちになります。これがむくみの引き金になるといわれているのです。マグネシウムは天然の利尿効果のある物質。
マグネシウムの働きを助けるのがビタミンB6です。ですから、マグネシウムとビタミンB6を補給することが必要です。
たとえばミネラルウオーターを飲むときでも、マグネシウムの多く含まれるものをチェックして飲んでください。ただ、マグネシウムが多く含まれると、味はあまりよくありません。少々飲みにくいときには、ライムやオレンジをしぼり、果汁を加えるとよいでしょう。
柑橘類の果汁に含まれるカリウムが塩分の排泄に必要であり、むくみを防ぐことはすでにお話ししたとおりです。
マグネシウムを多く含む食品はバナナ、みそ、ほうれんそう、大豆、そらまめなど。ビタミンB6を多く含む食品はミルク、バナナ、小麦胚芽、キャベツ、卵、レバーなどです。
朝、バナナスライスにミルクをかけてみたり、夜、昆布だしでキャベツのスープをつくってはいかが。こうした食品を組み合わせてとることで、リズムの乱れによってあらわれる肌の変化を最小限にくいとめてください。
自分の体のリズムについて、もう一度考えてみてくださいね。