海原純子の医学講座

 「結婚をしても仕事を続けるつもり」という女性はたくさんいます。でも、実際に結婚するとなかなか予定通り、計画通りにはいかないもの。
 仕事を充実させようとすると、かなりの覚悟と忍耐?が必要のようです。
 女性が結婚と仕事を両立させようとして、ストレス性疾患に倒れるのをさんざん見てきた私としては、どうしても知っておいてほしい「スーパーウーマン症候群」という病気があります。

 スーパーウーマン症候群という名前は、今から13年ほど前、アメリカでベストセラーになった出版物のタイトルです。
 その内容は、結婚生活を続けながら仕事をする女性が、すべてを完壁にこなそうとして、燃え尽きたような状態に陥るというものでした。

 当時は日本でも、男女雇用機会均等法が施行されたころ。女性の職場進出が、もてはやされる風潮が一挙に広がり、わが国でも仕事と家庭の両立で疲れた女性がふえ始めていました。これは、そのころ受けた女性の悩み相談のひとつです。

スーパーウーマン症候群のケースレポート
 P子さんは32歳。女性の職場進出という当時の風潮もあり、大抜擢されて、ある雑誌(業界誌)の編集長になりました。
 P子さんは3年前に結婚し、夫とふたり暮らし。旦那さまは仕事に理解があり、昇進をとても喜んでくれたそうです。P子さんもはりきって仕事を続けました。

 彼女はサラリーマン家庭に育ち、お母さんは良妻賢母型。ですから、家事を夫に手伝ってもらうことに罪悪感を感じたため、家のことは完壁にして、仕事もすることをポリシーとしてきました。
 ところが、編集長ともなると、今までとはだいぶ仕事内容が変わってきます。がんばりやの彼女は、それでも家事を人まかせにせず、しかも編集長の仕事の他に、業界の関係者との研究会などに積極的に参加しました。
体がきついなと感じたものの、弱音を吐かず、旦那さまもそんなP子さんの不調に気づかなかったようです。

チェックリスト(16)あなたのスーパーウーマン度

当てはまるものにチェックを付けてください。
1
母親は専業主婦
2
女は家庭を守るのがいちばん、という家庭や風潮の中で育った
3
女子校出身
4
チームワークが苦手
5
人に弱みを見せたくないほうである
6
家事の手抜きができない
7
仕事で責任のある立場にいる
8
まわりから頼りにされてしまう傾向がある
9
周囲から「がんばりや」と評価されていて、それを失いたくない
10 人から頼まれるとイヤと言えない
11 家事を男性に頼むことに罪悪感がある
12 夫と夫の家族は「男は仕事、女は家事」という気持ちが強い

いかがでしょう。こうした傾向が強い人ほど要注意といえそうです
0〜2項目 今のところOK。今後も注意を
3〜5項目 スーパーウーマン予備軍
6項目以上 スーパーウーマンです。すぐに対策を。

ある日、社外の研究会の席上、P子さんは急にめまいと立ちくらみがして倒れ、救急車で運ばれました。診断は、ストレスによる自律神経失調症。しばらく会社を休んだら、と言われ、せっかく手に入れた編集長の職を失いそうだと、落ち込んでしまったというのです。
P子さんは、いわゆるスーパーウーマン症候群といえるでしょう。仕事も家庭もすべて自分で完壁にと、ハリキリすぎるとこうした燃えつき状態に陥るのです。

1)仕事も家庭もがんばって3年以上
2)不眠、寝つきが悪い
3)集中力の低下
4)ファイトがわかない
5)肩こり、手足の冷え
6)発汗異常、のぼせ
7)頭痛
8)下痢、便秘
9)食欲異常
10)めまい、耳鳴り
11)生理不順

 こうした症状があるとき、とくに3項目以上該当する人は要注意です。しかし、こうしたスーパーウーマン症候群にも、なりやすい人となりにくい人がいるようです。将来 のため、あなたも上記のテストでチェックしてみてください。

 さて、スーパーウーマン症候群に陥らないためには、どうすればいいのでしょう。
 日本の男性が家事にかける時間は1日に11分間ほどでしたっけ。だからといって、声高に「女の権利」を主張して「家事を分担しょう」と言っても、なかなかうまくいかな いものです。
 そこでいくつかの処方箋を、ご紹介しておきましょう。


処方箋26 スーパーウーマン症候群改善メニュー


●Dr.純子がすすめるメニュー1●「最初はとばすなかれ」

 結嬉当初がんばりすぎないこと。
 結婚してすぐのころ、家事を完壁にして何もかも自分でやってしまうと、これはもうスーパーウーマン予備群となります。男性の期待と要求は、次第に強くなり、自分では何もしなくなってしまうもの。

 仕事を続けていくと、次第に仕事の責任も重くなり、家事にかける時間が少なくなりがちです。そうなってから夫に家事を頼んでも、もう遅い。夫は「初めは自分でやって いたじゃないか、だんだん手抜きになった」と思ってしまうのです。

 くれぐれも、新婚の時期に家事をがんばりすぎず、手分けする習慣をつけておくことです。夫の家事手伝いの習慣づけは、早ければ早いほどスムーズで無理なく成功するのです。

●Dr.純子がすすめるメニュー2●「アイ・メッセージでものを頼む」

 夫(男性)におだやかにものを頼むには、アイ(I)・メッセージを使うことが大切です。
 例をあげてみましょう。
・あなた、早く帰ってきてゴミを捨ててよ
・あなたが遅れるから悪いのよ。
 という言い方を
・わたし、あなたに早く帰ってゴミを捨ててもらいたいんだけど。
・わたし、30分も待ったわ。
 というアイ・メッセージに変換して、ものを言うと伝わりやすいのです。
 ユー・メッセージは、相手が非難を受けているような強迫感を感じてしまうものなのです。

●Dr.純子がすすめるメニュー3●「ひとりで背負い込まない」

 なんといってもいちばん大切なのは、あなたの意識です。家事をするのは女。家事を人に頼むのは悪いこと、すべてをひとりでしなければいけない。こうした意識で、 すべてをひとりで背負い込むことが、もっとも病気に陥りやすくする引き金になるのです。

 これから結婚を考えているあなた、息切れしてしまわないように、ぜひスーパーウーマン症候群について考えてみてくださいね。