海原純子の医学講座

「幸せな女は美しい」、これはどうも真実のようです。ただし幸せといっても、お金の有無や生まれつきの美貌とは関係がなくて、あくまでその人の心の状態いかんが美を決定しているといえそう。心の状態をよくする、ストレスマネージメントを行うことは、きれいになる条件かもしれません。

 春先というのは、ストレスが引き金になり体調をくずす人がとても多いのです。就職、入学、転職という環境要因のストレスがふえることとも無関係ではないようです。

 知人のQ子さん(32歳)は小規模な広告代理店で仕事をしていますが、最近スポンサーの担当者が替わって話がかみ合わず、以来体調の悪さをこぼしています。イライラしてタバコの量がふえ、夜になると甘いものが食べたくなる。チョコレートを食べすぎて胃の調子が悪く胸やけがして、顔にも吹き出物が多くなったとのこと。Q子さんは真面目で黙々と仕事をする性格だけに、職場のストレスをためこんでしまっているのかもしれません。

 ストレスは環境要因と性格、そしてものごとの受けとめ方によって影響が異なってきます。同じようなイヤなことがあっても、乗り切れる人とストレス性の病気になる人とがいます。そこで、自分の環境要因のストレスと性格チェックをしてみましょう。

環境が引き起こすストレス要因チェック

 ご存じの方も多いと思いますが、ここで環境要因のストレスをチェックする「ホームズ指数」について改めて考えてみましょう。この指数は、アメリカのホームズという学者によって発表された、生活の中のストレスを点数づけしたものです。配偶者の死を100点として、これと比較した生活のストレスを表示しています。

 悪いことばかりでなく、たとえば結婚のようないわゆる「いいこと」もストレスになるのに驚かれる方がいるかもしれません。こうした生活上のストレスを過去1年間さかのぽってチェックし、その合計を計算してみてください。


ホームズ指数(環境ストレスチェック)

生活上の出来事
ストレス度
配偶者の死亡 100
離婚 73
別居 65
留置所拘留 63
親密な家族の死亡 63
自分の病気あるいは障害 53
結婚 50
失業 47
夫婦の和解 45
退職 45
家族の一員が健康を害する 44
妊娠 40
性の問題 39
家族に新しいメンバーが加わる 39
新しい仕事への再適応 39
経済状態の変化 38
親友の死亡 37
異なった仕事への配置換え 36
配偶者との論争の回数の変化 35
1万ドル以上の抵当か借金 31
担保物件の受け戻し値喪失 30
仕事上の責任変化 29
子供が家を離れる 29
親戚とのトラブル 29
特別な業績 28
妻が仕事を始める。あるいは中止する 26
学校が始まる 26
生活状況の変化 25
習慣を改める 24
上司とのトラブル 23
仕事上の条件が変わる 20
住居が変わる 20
学校が変わる 20
レクリエーションの変化 19
教会活動の変化 19
社会活動の変化 18
1万ドル以下の抵当か借金 17
生活習慣の変化 16
家族が団らんする回数の変化 15
食習慣の変化 15
休暇 13
クリスマス 12
ちょっとした違反行為 11

こんな症状は「じっとがまんのいい子症候群」の兆候です

 じっとがまんする傾向のある人はそのストレスをためこんでしまい、うまくコントロールすることができなくなります。こうした感情のベクトルが過食やアルコール依存への引き金になることが多いのです。

・顔に吹き出物やじんましんが出ることが多い
・タバコがやめられない
・甘いもの(チョコレー卜やアイスクリーム)をやめられなくて過食傾向あり
・やけ食い、やけ買いをしてしまう

チェックリスト(17)あなたの「じっとがまんのいい子」度テスト
当てはまるものにチェックを付けてください。
1
泣いたり笑ったり、感情を表に出すのははしたないと思う
2
石橋を叩いても渡らないタイプ
3
努力家でコツコツ型
4
整理整頓が得意で、机の上や台所、タンスがきちんと片づいている
5
人と争って波風を立てたくない
6
人の意見にすぐ妥協する
7
レストランのメニュー選びは人に任せる
8
声が小さい
9
協調性があると思う
10 ため息をつくことが多い
11 どうせ私なんか、というのが口ぐせ
12 いつも人の期待に添うようにしていたい
13 子供のころから優等生、入社してからは模範社員である
14 上司や同僚と争うことはほとんどない
15 積立貯金をしている
0〜3項目 自分の感情をきちんと表現するタイプ。でも時々わがままと言われるかも
4〜5項目 相手の意見も聞き、自分の気持ちも伝えられる「OK」タイプ
6項目以上 じっとがまんのいい子タイプ。フラストレーションがたまりやすい。もっと自分の気持ちを伝えましょう

 知らず知らずのうちに買い物が多い方、チョコレートを食べてしまう方は自分の心のケアが必要です。
 ところで、がまんする傾向のある方のために、ちょっとした行動療法をお教えしましょう。

1)声を大きくする、ときには歌う
2)失敗することを恐れずトライしてみる
3)友達といっしょに映画を観て、たまにはワイワイ騒ぐことを試してみる
4)悲しい映画を観て泣いても、恥ずかしがらない
5)自分を表現できる文章を書く
6)楽しいこと、うまくいくことを空想する
7)たまには「ノー」と断ってみる

 自分をおさえこむ人は、自分を「表現する」ことが苦手です。話すことが不得意な人は日記を書く、絵を描く、写真を撮る、料理をつくる、など自分の気持ちを表現する手段を見つけてください。



処方箋26 ストレスマネージメントを助ける一品メニュー


●処方1●朝のヘルシードリンク

 用意するもの
・グレープフルーツ2分の1個
・レモン2分の1個
・オリゴ糖少々
・コントレックス100ミリリットル
 グレープフルーツ、レモンをしぼりコントレックスを加える。コントレックスにはカルシウムが多く含まれており、かつ吸収もよいのでイライラ防止に。ストレスが多いときは血液が濃縮する傾向にあります。これを防止するために朝の水分は有効。

●処方2●菜の花サラダ

 用意するもの
・菜の花2分の1わ
・ごま少々
・エクストラバージンオリーブオイル、ポン酢各少々
・ホタルイカ少々
 菜の花をゆでてオリーブオイルとポン酢のドレッシングをかけ、ごまとホタルイカを加える。
 菜の花はカルシウムがたっぷり、ホタルイカはビタミンAが豊富、オリーブオイルのビタミンEとあわせるとストレスに対する抗酸化ビタミンが充分にとれます。

●処方3●夜、おなじみのホットミルク+シナモン

 夜の過食防止ドリンク。ローファットミルクを泡立てて、シナモンパウダーとオリゴ糖を加えます。カルシウムを補給してイライラを防止します。また、夜おなかが空いたときは全粒粉のパンを卜ーストして1枚、ミルクとともにゆっくり噛んで食べてみてください。炭水化物の補給で、セロトニンというホルモンが分泌され過食防止になります。バナナを1本スライスしてミルクに入れてもよいでしょう。

 さて、あなたのストレス度はいかがでしたか。ライフスタイルを点検し、ちょっと気分を変えてストレスフルなシーズンを乗り切ってください。