海原純子の医学講座

 左脳は、 思考、計算、分析などを司る脳。
 最近、「大人のためのドリル」が流行して、よく売れているということですが、その背景には、左脳を使わなくなった大人たちが、「左脳を使いたい」という欲求を感じているのかもしれません。ものを考えているようで、
 実は考えていない
 思考を使っていない生活をしている
 という人は案外多いのです。

 というのは、一日の生活を振り返ってみるとよくわかるかもしれません。
 朝起きてテレビをつける。テレビのニュースを見る。朝刊を眺める……。
 ものを考えているようで、実は、テレビが流している情報をBGMにし、新聞記事を「ああ、そんなことがあったのか」と眺め、急いで出勤、ということがほとんどでしょう。

 朝から社説を読み考えたり、論説コーナーなどには目を通さないものですよね。通勤電車の中では、「通勤」に集中しているし、会社では、仕事マニュアルに従い、コンピュータが資料を調べてくれる。

 考えているようで、実際に左脳を使っているのはコンピュータ。自分はただその結果を眺め、「考えたつもり」になっていることが多いのです。

 ちょっと、自分の左脳を使えばわかることが、できない、マニュアルがないとわからない、誰かが考えてくれないとどうしていいのかわからない、というのは、ふだん左脳を鍛えていないからです。

 左脳を使っていない、ということは、
 自分の考えがない、つまり、
 自分がどうしていいかわからない
 判断力が低下し、他者に依存する、ということにつながるのです。
 すると、
 みんながするから、こうしよう
 みんなと同じようにすれば安全
 というようになり、左脳を使わない人になっていきます。

 左脳を使わない女性は、なんとなく依存的で、ぼーっとして、自分の意見を言わず、人についていくので、一見「かわいい女」。でも、しゃんとしたところや凛とした雰囲気がなく、困ったことがあると判断ができずに、すぐ混乱してパニックになったりするのです。

 左脳を使って、凛とした女になりましょう。
 凛とした表情は魅力的ですよ。スーツを着て、賢そうに見せたり、仕事ができそうに見せかけで勝負するのではなく、本物の「左脳の強い女」になってください。
 コンピュータまかせではなく、あなたの左脳を鍛えましょう。それには、大人のドリルなんて必要ないのです。

 テレビを消す必要もありません。どうぞテレビをつけてください。
 たとえば、朝のワイドショーをつけたとき、事件や事故の報道を見て、戟争 やテロの報道を見て、評論家やコメンテーターの意見のところで、「音消」にするのです。
 そして、コメンテーターではなく、「あなたがどう考えるか」
 自分の意見を3分くらいにまとめてみてください。

 もし、あなたがその戦争について知識がないのなら、そして、それに興味が あるなら、パソコンのキーをたたかず、図書館や本屋さんで何か一冊、そのことに関する本を探して、時間がかかってもいいから、ゆっくり読破してください。

 パソコンの情報は、何十冊もの本や論文から必要なこと、重要なことを抜き出し、まとめ、整理されたものです。
 こうした作業を自分でしないと、書物や論文の中から重要なことを抜き出し、 自分にとって大切な情報を整理する能力がなくなってしまうのです。
 本を一冊読破したところで、テレビをつけ、あなた自身のコメントを考えてみてください。

 新聞も同じ。誰かの意見、識者の意見を、自分の意見にするのはなく、まず、 それについて自分でどう考えるか考えてみてから、他人の意見を読んでください。
 こうしたことの積み重ねで、あなたの左脳は鍛えられてくるはずです。